第3回ひろしまアニメーションシーズンにてクィア・アニメーションのキュレーションの機会をいただきました。
クィア・アニメーション・スクリーニング +
Queer Animation Screening +
プログラム概要
今回のクィア・アニメーション・スクリーニングでは、クィア表象や当事者経験の蓄積を前提にしながら、変形や反復、逸脱といった運動に注目し、クィアを語ろうとする作品群を紹介します。
アニメーションとは、切断された1フレームから次のフレームへと身体が描き直され続ける技法であるとも考えられます。 その原理はすでに「正しい身体」の幻想を問い返し、そこで目撃されるのは、完成した形ではなく、変容の連続です。
規範的な身体、規範的な欲望、規範的な時間。アニメーションというメディアには、それらを揺るがし、クィアな知覚を拓く潜在性があります。その可能性について、本プログラムを通して提案します。
上映後にはキュレータートークを予定しています。
8月20日(木) 12:45~ @JMSアステールプラザ中ホール


まずは広島の地において、クィア・アニメーション上映の機会をいただけることに心から感謝しております。ご参加くださいました皆様、情報共有においてご協力くださいました皆様に感謝しております。当日は機材トラブルもあり、PCの再接続等でお時間いただきましたが、一緒になってヒヤヒヤしてくださった皆様、温かく見守ってくださりありがとうございました。
かくれんぼ/Hide and Seek
シュー・ジュンジェ(ディンゴ)/Junjie (Dinggo) Xu /イギリス/2024/6分06秒
落下/The Fall
クリスティーヌ・ルベ/Christine Rebet/フランス/2025/5分19秒
Dの肖像/Portrait of D
マリア・ロレンソ/María Lorenzo/スペイン/2003/2025/8分30秒
関係の譜/Compositions for Understanding Relationships
デヴィッド・デ・ラ・フエンテ/David De La Fuente/アメリカ合衆国/2021/5分30秒
川の生まれるところ/How A River Is Born
ルーマ・フローレス/Luma Flôres/ブラジル/2025/8分33秒
あなたの名前を聞かせて/Tell Me Your Name, Friend
マシュー・バレン/Matthew Baren/中国/2025/9分30秒
そして6作品、6名の作家の皆様、心からありがとうございます!
このプログラムでは、性的マイノリティやクィアの表象について当事者の経験が、作中において、またアニメーションという表現技法の中でいかなる実践をされているかという意図のもとに試みました。
6作品の上映を最初に行い、トークの部分の中心では、上映だけにとどまらず作家の皆様の声を聞くということを中心に進めたく、事前にインタビューを行いビデオレターをいただきましたので、その上映をメインに行いました。
インタビュー/内容抜粋
シュー・ジュンジェ(ディンゴ)監督のインタビューでは、サラ・アーメッドの本に触発され性的空間と社会的空間のあいだのねじれを、セットや作品の空間として意図したことが触れられました。また、本作で時間的空間を行き来できる身体はダンサーですが、そのダンス自体もヴォーギング文化で「ニュー・ウェイ」と呼ばれるもので、身体を伸ばし、ねじって視覚的な錯覚を生み出すそれ自体に意識的であったことがわかり、感激しました。

クリスティーヌ・ルベ監督は、作品の主題であるマローンのコミュニティにおける遺産のを語り継ぐことに対して、どのように外部から内部へアプローチしていったのかをお教えくださいました。
(作品背景:18世紀初頭のジャマイカで逃亡奴隷になったアフリカの人々がブルーマウンテンでマローンというコミュニティを形成。コミュニティのリーダークィーン・ナニーが奴隷制と植民地主義に抵抗して自由や解放のために戦いを率ますが、その彼女の精神というのが子供たちに受け継がれていて、特に本作での語り手シモーヌ・ハリス自身はクィアを公言しており、彼/彼女たちが何を受け継いだのかについて、作中の中で語られる作品です。)
特に、マローンの人々の生き延びるための戦略がカモフラージュだったことに取材を通して気がついた時から作品を作り始めることができた、ということを伺い、作品におけるストーリーテリングについて理解が深まりました。

マリア・ロレンソ監督からは、22年前の作品に、リマスターという作業を通してもう一度向き合う際に、作り手として、また他者からどう受容されていたか、の変化もお伺いしました。特に作品そのものが置かれている空間が異なれば、クィア作品として需要のされ方も変わることについてもお伺いしました。また、作品の修復するということは、過去の自分との対面であり、また今の時代に手作業でできることを考えたという点も伺い、自画像についてマリアさんの実践が続くことを感じました。制作手記を直接いただきまして、来場の方々と共有できたことも嬉しい出来事でした!


デヴィッド・デ・ラ・フエンテ監督からは、彼の創作の視覚言語であるもバランス、スケール、リズム、色、プロポーションなど、形同士の関係、文脈化についてお伺いしました。特に本作では、クィア文脈における、可視不可視の関係をノンフォトブルーの鉛筆で描くこと(コンピューターでスキャンすると映らないように設計された鉛筆)で可視化させたということも伺い、アニメーションという媒体でしか見つけられないイメージについてお話しくださいました。

ルーマ・フローレス監督には、言語を用いずに女性同士の関係を描く実践についてお伺いしました。欲望、アイデンティティ、惹かれる気持ちに名前をつけることを知る前に、自らは感覚、感情、身体を通して経験するため、であるから、作品を説明以前の場所に留めおく、というお話を伺いました。本作は川や水が重要なテーマですが、完全には理解できない何かへ向かって、自分自身が流れていくことを許す物語でもあるとお答えくださいました。

マシュー・バレン監督は、クィアやトランスジェンダーの人々が名前や名乗りについて経験すること、その模索についてのドキュメンタリー作品においての制作背景を伺いました。普段はドキュメンタリーを制作されているマシューさんが、今回アニメーションという表現を使ったことは、実写映像と比べてアニメーション、普段ならしないほど長い時間向き合あったこと、友人たちが語る一語一語、あら
ゆるニュアンスを、本当によく聞き、考えることになった、と言われていたことも、差異を知るヒントに感じました。

以上はインタビュー内容の一部ですが、少しご紹介させていただきました。
作家の皆様には本当にフレンドリーに接していただき、温かいビデオをいただきありがとうございました!
今回、別の身体、別の時間、別の欲望という着眼点から作品を見ていくと、つくり手がどのようにその規範や正しいあり方から、逸らしていくのか、その必然や切実さを実感できました。特に、スクリーンで描かれる身体性と同時に、作品を生み出す側の手や、身体感覚に触れることができ、画面内部の運動と、作品が生まれるまでの運動を同時に見るような経験になりました。
上映後にお声がけくださった方、また、ご感想をメールにてお送りくださった方、
ひろしまアニメーションシーズンの皆様、お越しくださった皆様、関係者、スタッフの皆様ありがとうございました!
今後もぜひ素晴らしい世界をご紹介できるように活動を続けていきたいく思います。
後日談
これまで何度か上映させていただいたにも関わらず、
今までメッセージのやり取りしかしていなかったタン・ウェイ・キョン/Tan Wei Keongさんとついにお会いできました!
https://tanweikeong.com/

